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2020-08

アイシャお手製のおまもり

ノート

 空にかかる色の衣が、灰から橙にかわる頃。モガの村は白霧に包まれていた。
聞こえるのは波の音とそれに合わせて軋む木の音、風を切り互いを呼び合う海鳥たちの声。
私は一人、カウンターでその音に耳を傾けていた。
村と森を丸ごと包むような静寂が、私の心を時に逸らせ、時に落ち着かせる。

 カウンターの定位置に置かれた、表紙にギルドの印が押された私のノート。
この村からギルドの支部がおかれる砂漠の街ロックラックに飛び出し、
必死に勉強して採用試験に合格したとき、この制服と一緒に支給された私のノート。
初めて手に取った時は思いばかりが募り、透明のペンで夢を描いた私のノート。
それは今では形となり、たくさんの人の想いとともに綴られた私のノート……。

 パラパラとめくり私のではない、“彼”の今までの狩猟記録を振り返る。
最初は真っ白だったノートにも随分と筆を走らせたものだ。
そこにはもう、一ページしか残されていない。
黒くなるほど書き込まれたページたちを過ぎ、その最後のページと裏表紙にまでたどり着く。
そこには私が“彼”のために作ったおまもりが挿んである。

 彼がこの狩猟を終えれば、タンジアでの狩猟が待っているのだろう。
私ができるのは、もうこれくらいしかない。
雑貨屋のお姉さんに教わりながら、狩りの安全と成功に祈りを込めて、
“彼”が狩りに出かけるのを見送ってからこそこそと拵えたおまもり。
一生懸命作ったのだから渡したいのに、何故か渡したくない…。
そんな感傷に駆られてまた本を閉じた。その時はもうすぐ、来てしまうから。

 まるで空が低くなってしまったと思わせるほど分厚い雲を、太陽が掻き分けその顔を覗かせた頃。
“彼”の帰還を知らせる船の汽笛が白霧と静寂を切り裂き、海鳥たちを天へ解き放った。
私の想いとともに―。

                             『とある漁村の受付嬢』より抜粋

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日々の狩猟記録や、狩りに纏わるお話を綴っています。
重弩を用いた攻撃支援術専攻。

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